アスキーを買って電車で読んでいたら、神足裕司さんのコラムに紹介されていた本が面白そうだったんで、買って読んでみました。

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

あーまた下流社会物ね、と思うようなタイトルですが、これが教育論でして。なんで今の子供の学力が落ちているか、なんでニートが生まれるか、ということを、独自の視点で論じている本です。
内容はまあ読んでいただくとして、面白いなーと思ったのが、師弟関係に関する考え方です。著者の内田さんは、学びの本質を考える材料として師弟関係ということについて、スターウォーズのアナキンとオビワンの話を使いながら説明されているのですが、そこで、師であることの条件は、一つだけだとおっしゃってます。それは、
「「師であることの条件」は、「師を持っている」ことです。」
もうちょっと説明してるところがあるんですが、
「弟子として師に仕え、自分の能力を無限に超える存在とつながっているという感覚を持ったことがある。ある無限に続く長い流れの中の、自分は一つの環である。長い鎖の中のただ一つの環にすぎないのだけれど、自分がいなければ、その鎖はとぎれてしまうという自覚と強烈な使命感を抱いたことがある。そういう感覚を持っていることが師の唯一の条件だ、と。」
自分は師匠よりも優秀だと確信し、更なる力を得るためにジェダイを出て行き、自己完結してしまったアナキンは、それ以上は自分の能力を伸ばすことができず、一方、ジェダイの思想や自らの師とつながっていて、常に自分と違うもの、自分を超えるものに意識が開かれているオビワンは、自分の中に滔々と流れ込んでくる物を受け止めて、さらに成長できたからこそ、最後は勝利できたのだ。ルーカス、意外と分かってるなー、と内田さんはおっしゃっています。
教育の本質を説明するアナロジーとしてとても分かりやすいですが、最近歳をとってきて、会社でもなんとなく役割が変わってきていることをやや自覚しつつある身としては、なんかぼんやり考えていたことを説明してもらったような感覚になります。
英知の引き継ぎが、そのまま種の引き継ぎになり、その時に初めて自分の存在価値が分かる。そして、伝えなければいけないことは、自分の引きついだ英知とそれを引き継いできた先人を尊敬する心です。後者がないと、後進に伝えて行くための理由が無くなってしまうのでしょうね。そういう大きな連環の中に我々はいるわけです。
会社は教育の場でも、ジェダイの騎士がいるわけでもないので、明日から師弟制度ね、というつもりもないのですが、なんか、こういう失われつつある考え方が、今足りてないのかもなー、と思い当たることもあります。
とまあ、他にも興味深い話がたくさんありますので、ご興味ある方はご一読を。